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大阪地方裁判所 平成2年(ワ)3425号 判決 1991年12月16日

原告

辻村節也

原告(反訴被告)

辻村禎章

被告

森崎勇雄

ほか一名

反訴原告

富士運輸有限会社

主文

一  別紙目録記載の交通事故に基づく原告らの被告森崎勇雄に対する損害賠償債務は各自金一万一一〇〇円を、被告森崎幸緒に対する損害賠償債務は各自七四〇〇円を超えて存在しないことを確認する。

二  原告(反訴被告)辻村禎章は、反訴原告に対して、四九六万二五〇〇円及びこれに対する平成二年九月一日から支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  反訴原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、原告らと被告らとの間では、被告らの負担とし、反訴原告と反訴被告との間ではこれを三分し、その一を反訴被告の負担とし、その余を反訴原告の負担とする。

四  この判決は、二項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  本訴

主文同旨

二  反訴

原告(反訴被告)辻村禎章は、反訴原告に対して、一二三〇万九五〇〇円及びこれに対する平成二年九月一日から支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、交通事故に関し、加害車の運転者及び保有者らが被害者らに対して人損について債務の一部不存在確認を求め(本訴)、被害車両の所有者が加害車の運転者に対して物損について損害賠償を求め(反訴)た事件である。

一  争いのない事実

1  事故の発生

別紙目録記載の交通事故が発生した。

2  損害関係

(一) 本件事故により、被告らが負傷し、被告森崎勇雄は平成二年三月一四日から同月一六日まで行岡病院に通院し(実通院日数二日)、被告森崎幸緒は同月一四日と一五日、ムツミ病院に通院した。

(二) 本件事故により、被害車が損傷した。

3  責任関係

(一) 原告辻村節也は、人損に関し自賠法三条の責任を負う立場にある。

(二) 原告(反訴被告)辻村禎章は、総損害に関し民法七〇九条の責任を負う立場にある。

二  争点

損害額

第三争点(損害額)に対する判断

一  人損について

被告らは、人損について具体的な主張をしていない。

したがつて、原告らが主張する被告森崎勇雄につき慰謝料一万一一〇〇円、被告森崎幸緒につき慰謝料七四〇〇円以上の損害が被告らに発生したとは認められない。

二  物損について

1  修理費について(請求額三七五万九五〇〇円) 三四五万〇五〇〇円

(一) 反訴原告は、本件事故による修理費として、三七五万九五〇〇円を要したと主張し、原告(反訴被告)辻村禎章は、一五〇万円の限度で認め、その余を争つた。

(二) そして、反訴原告代表者(兼被告森崎幸緒)は、代表者尋問において、乙七の見積書(見積金額合計三六七万五〇七〇円)に基づき乙六の領収書にあるとおり、平成二年八月三一日に修理代三六五万円、消費税一〇万九五〇〇円の合計三七五万九五〇〇円を被害車の修理業者である株式会社京都オートサービス(以下「修理工場」という。)に支払つたと供述する。

(三) しかしながら、乙七記載の見積金額は、工賃九五万五〇〇〇円及びこれに対する消費税二万八六五〇円、部品代二六一万三〇三〇円及びこれに対する消費税七万八三九〇円の合計であつて、既に消費税分が含まれているものであり、支払いに際し、更に一〇万円あまりの消費税額が加算されるというのは不自然である。

(四) また、証人村井俊雄は、安田火災海上保険から依頼を受けて損害調査に当たつたアジヤスターである同証人と修理工場との間で、同年一〇月二三日、被害車の修理費を三四五万〇五〇〇円とする協定がなされた旨(六項、一一項)証言するところ、反訴原告が提出した乙七には村井証言に沿うメモ書き(しかも、一〇月三一日に反訴原告から集金したと記載されている。)がなされている。

(五) したがつて、村井証言にあるように被害車の修理料相当の損害は、三四五万〇五〇〇円であつたものと認められる。

2  代車料について(請求額八五五万円) 一五一万二〇〇〇円

(一) 反訴原告は、本件事故による代車料として、事故日(平成二年三月一四日)から修理完了日(同年八月三一日)までの一七一日間につき一日五万円割合によつて算出した八五五万円を要したと主張し、原告(反訴被告)辻村禎章は、二〇万円(二〇日間につき一日一万円の割合)の限度で認め、その余を争つた。

(二) そして、乙三ないし乙五によれば、反訴原告が、修理工場から平成二年二月一三日登録のメルセデス・ベンツ五六〇SEL(京都三三つ七八二二)を一日当たり五万円で、平成二年三月一四日から同年八月三一日まで一七一日間にわたり借り受け、八五五万円を支払つたことが認められる。

(三) 修理期間について

前記争いのない事実に証拠(甲二の一ないし四、甲九ないし甲一一、乙二、証人出野成一、証人村井俊雄)を総合すれば、本件事故の一、二日後、反訴原告から修理工場に対し修理の見積依頼があつたこと、修理工場において被害車を引き取り、修理費を見積つたこと、その見積ができたのは当初依頼のあつた日から二週間後であつたこと、本件事故後反訴原告代表者である被告森崎幸緒は、新車買い替えを求めていたこと、京都陸運支局に対し修理許可申請がなされたのが平成二年四月一三日、修理許可がなされたのが同月一六日、職権打刻がなされたのが同年八月七日であつたこと、アジヤスターである村井証人が修理完了前において、修理工場及び修理を一部担当した奥村モータースに赴いて調査したのが、同年三月一六日、五月一五日、六月九日、六月二九日であり、五月一五日の訪問は同月一三日にエンジンを降ろしたとの連絡を受けてなされたものであつたこと、被害車は並行輸入車であつたため、ハイドロサスペンス部品を本国であるドイツの業者から取り寄せる必要があつたところ、その注文をしたのが同年六月になつてからのことであったこと、また、その部品の注文が必要であると判明したのは修理を開始してから一週間後のことであつたこと、なお、本件事故による衝撃力は右前方から加わつたもので、フロントアンダーパネルグループ、左右フロントピラー、カウル、ダツシユパネル及びフロントフロアーに波及する程度のものであつたことが認められ、本件訴状(当初は物損分を含む債務の一部不存在確認請求事件)の訴状が反訴原告に送達されたのが平成二年五月二一日であることは本件記録上明らかである(なお、反訴原告代表者及び証人出野の供述中右認定に反する部分(特に、事故後遅滞なく修理することにした旨の供述部分)は、京都陸運支局に対する修理許可申請がなされたのが平成二年四月一三日になつてからのことであることに照して採用できない。

そして、右事実を前提とした場合、反訴原告代表者が被害車を修理することで了解したのは京都陸運支局に対する修理許可申請がなされた同年四月一三日より数日前のことであり、本格的に修理に着手することにされたのは、エンジンを降ろした旨村井証人に伝えた同年五月一三日により数日前のことであつたものと推認されることになる。しかしながら、反訴原告代表者が修理で済ますことを了解するまでに要した期間は、その点についてある程度の考慮が必要であつたにしてもいささか長く、また、修理に着手するまでに要した期間も、許可が平成二年四月一六日になされながら、エンジンを五月中ごろまで降ろさないままの状態におかれるなど(証人村井の調査はその連絡を受けた二日後になされており、それが遅滞の原因になつていないことは明らかである。)いささか長いものといわなければならず、したがつて、許可申請前の期間のうち二〇日間及び修理着手前の期間のうち二五日間の合計四五日間については相当性を認めるとができないので、被害車の修理期間として相当性を認められるのは、これらを差し引いた一二六日ということになる。

(四) 相当な代車料について

反訴原告代表者尋問の結果によれば、反訴原告代表者は、本件事故当時、運送業を営む反訴原告を経営する他、電気製品の製造、メツキ工業などの事業を行ない、それに関連して被害車(メルセデス・ベンツ)を使用していたことが認められるものの、その使用目的との関係では国産の上級の高級車をもつて被害車の代車とすることで足り、敢えて反訴原告代表者が、代車としてもメルセデス・ベンツを使用しなければならない必要性を認めることができない。また、反訴原告代表者は同尋問において、安全のため、代車としてメルセデス・ベンツ以外の自動車を使用することは考えなかつたとも供述するが、我が国において圧倒的に多くの市場専有率をもつて使用され、また、ドイツを含む諸外国においても多数使用されているメルセデス・ベンツ以外の自動車の安全性に対する被害者らの不安感についてまで、加害者として賠償しなければならないとするのは相当ではない。そうすると、反訴被告としては、国産の上級の高級車をもつて被害車の代車とすることで足り、それを越えるものについては本件事故と相当因果関係がないものとして、賠償の責めを負わないものとするのが相当であることになる。

次に、国産の上級の高級車を代車とした場合の代車料についてであるが、甲三によれば、本件のように長期に代車を必要とする場合になされるマンスリー契約(月極め契約)におけるレンタカー料金は最高三二万三六〇〇円(消費税九七〇八円別)程度とされていることが認められるから、本件事故による代車料相当の損害は、代車料を一日当たり一万二〇〇〇円として前記一二六日を乗じて算出した一五一万二〇〇〇円が相当であることになる。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 松井英隆)

別紙 目録

一 日時 平成二年三月一四日午後一時一〇分頃

二 場所 京都府亀岡市曽我部町春日部一六付近国道四二三号線上

三 加害車 普通乗用自動車(大阪七七せ八〇〇一号)

右運転者 原告(反訴被告)辻村禎章

右保有者 原告辻村節也

四 被害車 普通乗用自動車(京三三せ六五〇〇号)

右運転者 被告森崎勇雄

右同乗者 被告森崎幸緒

右所有者 反訴原告富士運輸有限会社

五 態様 加害車がセンターラインをオーバーし、対向車線を走行中の被害車に衝突したもの。

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